「薩長軍の武器は"鉄砲"と言ってな…刀より
優れた物だ」


その言葉に、凜と早瀬以外は息を呑んだ。

刀より優れた物だと松平が断言したという事
は、今回は死傷者が多いと予想しているのだ
ろう。


「だが勝ち目がないと言う訳でもない」


俯いた皆は、それに顔を上げる。


「鉄砲は、攻撃に時間が掛かる。それを上手く
利用して、御所に奴等が攻撃して来た時、そこ
の警護組と挟み撃ちをして欲しいのだよ」


それなりの犠牲は出るやもしれん、と言う松
平は苦しげに眉根を寄せた。

鉄砲は少数の団体より多数の団体の方が狙い
やすい。

……藩士に犠牲は出るだろう。


「分かりました」

「あぁ……頼んだぞ」


松平は、犠牲が出る事は仕方がないと思って
いる訳ではない。

苦渋の決断であったのを悟り、凜は引き受け
た。

だがそれは皆も同じで、広間を出てからは直
ぐに稽古場に向かった。