秋……と呟くと、凜は急いで立ち上がった。


「稽古に行ってきます!!」

「え?あぁ……用はいいのか?あっ姫!?」


松平の声も聞かず、凜は走って稽古場に向か
っていた。


――早瀬 龍飛(リュウヒ)

松平の側近で、凜の師匠だ。



スパァンッ


「薫(カオル)っ試合するわよ!!」

「はっ!?ちょ、痛い痛い痛い痛い!!」


凜は宮部(ミヤベ)の部屋へ押し入ると、宮部の
首根っこを掴んで引きずり出した。

そして無理矢理稽古場に連れて行き、竹刀を
持たせる。


「ねぇ凜、何でそんな張り切ってんの?」

「あ、諒(リョウ)!審判お願い」

「無視!?」


宮部を無視して近くにいた氷上(ヒカミ)に審判
を頼むと、凜は構えた。

それに合わせて、宮部も訳が分からないまま
構える。


「始め」


氷上の合図で宮部が仕掛け、凜が避けて……


結局、物の数秒で終わった。


「凜、やけに気合い入ってますねぇ」