「怪談話をしようと思ってだなぁ!!」


……………。

凜はふるふると震え、顔を引き攣らせた。


「け……稽古場行ってくる」

「ちょお待て待て待て待て」


即座に立ち上がった凜の肩を掴み、永倉は本
気で楽しそうな笑顔を向けた。


「夏だろ?暑いだろ?」

「ここにいる方が暑苦しいわ」


永倉の言いたい事は分かった。

つまり『怪談話をして涼しくなろう』なんて
安直な考えを企てたのだろう。


「まぁそう言うなって。話してる内に涼しくな
るぜ?」


永倉はどうも鈍いらしい。

悪気がないという事は、凜が怖がりだと気づ
かずに誘っているという事だから。


「ひょっとして、怖いのか?」


だが原田は珍しくニヤリとからかうように笑
い、凜に吹っ掛けた。


「………誰が怖いなんて言ったのよ」


いつもは冷静な凜が図星を突かれて平常心で
いられるはずがない。