とは言っても。
命の恩人である松平 容保(マツダイラ カタモリ)の下
を離れるなんて考えられない凜は、自室で頭
を抱えていた。
新選組にいたい。
会津にいたい。
総司の隣にいたい。
松平の隣にいたい。
矛盾した思いが巡る。
一人では到底決められない気がして、凜は立
ち上がった。
「松平様、水城です」
「入れ」
松平に許可をもらって部屋に踏み入れると、
凜は松平の前で跪(ヒザマズ)いた。
「どうした?姫」
「あの……」
ニコニコと笑みを浮かべる松平には、どうし
ても言いづらい。
「おぉ、そうだ姫!近々、早瀬(ハヤセ)が帰って来
るのだよ」
決心して口を開いた凜を遮るように、松平が
嬉しそうに話した。
凜はそれを聞いて目を輝かせる。
「か……、帰って来るのですか!?」
「あぁ」
そんな凜を見て、微笑む松平。
「いっ、いつですか!?」
「そうだなぁ……秋頃になるやもしれん」