相当酒が回っているのか、相手が誰かも分か
らないようだ。
「暴力を振るう暇があるなら、幕府の為に精一
杯働いたらどうなの?」
態と挑発的に言うと、浪士達は怒りを露わに
して凜に掴み掛かろうとする。
が、凜は抜刀して目の前の浪士の首に刃先を
向けていたため、浪士は一瞬怯んだ。
「何か言いたい事でも?私は、間違った事は言
っていないわよ」
眼光鋭く浪士達を見ると、早々と逃げようと
する。
「幕府の犬がっ」
そう、捨て台詞を残して。
「………あんたらみたいな野良犬より、幕府
の飼い犬の方がよっぽど増しよ……」
どこか悲しげに呟く凜に、絡まれていた男が
声を掛けた。
「あの、ありがとうございました」
「……いえ。それより、大丈夫ですか」
男の頬には殴られたような痣があり、凜は気
遣わしげに頬に触れた。


