―――…
早瀬が帰ると知らされて間もない、一週間後
の朝の事。
「は?」
松平に呼ばれた凜は、いつものように直ぐに
飛んで来た。
……何を知らされるかも知らずに。
「今、何と……?」
状況が呑み込めず思わず聞き返す凜に、松平
は微笑んで言葉を紡ぐ。
「早瀬が、明日帰って来る事になったそうだ」
明日、早瀬が帰って来る。
心の中で呟くと、より現実味が増してきた。
「ほ……本当、ですかっ?」
「あぁ。今朝、早瀬から文が届いたのだよ」
みるみる内に目を輝かせる凜は、笑顔で頭を
下げて「見回りに行ってきます」と部屋を後に
した。
上機嫌で一人外の見回りをしていると、三人
の不逞浪士が目に入った。
酒を呑んでいるのか、赤い顔で町人の男の胸
倉を掴んでいる。
「ちょっといいかしら?」
声を掛けると、浪士達は苛立った様子で振り
返った。
「あぁん?」