「そうじゃなくて」 「もういい。もう、由芽の顔なんて見たくない」 そう言い残し、あずみは階段を下りていった。 パタパタと下りる音が、廊下を支配していた。 「あ……ずみ……」 * * * * 「この後、私にはよくない噂が出たけど。小学校の友達は私を信じてくれた」 「…………」 「だから……別にどうってことないし……」 必死で涙を堪えた。 もう、こんな弱いところを見せるのは嫌だったから。 「……タロー」 「全……然、へ、平気だ……ったし」