廊下ですれ違うとき、決まって彼はあたしにささやく。
「放課後、美術室でね、先生」
何か言い返そうと振り返ると、そこにはもう甘い香りが残っているだけで……
あたしは、小さくなっていく彼の背中を、ただ見つめることしかできない。
ダメだってわかってるのに。
こんなこと、誰かに知られたら、きっと問題になるのに。
放課後になると、あたしは美術室に向かってしまうんだ……
――あれ以来……
市川君が、あたしを襲いかけて以来。
市川君は、そういうことをあたしにするのを、ぱったりとやめた。
抱きしめてきたりとか、キスしたりとか……
そんな風にあたしに触れることは、本当になくなったんだ。
ただ美術室にいて、時間を過ごすだけ。
あたしのことを聞いたり、自分のことを話したり。
時には何も言わずに、あたしのことをじっと見てる。
その視線に気づかないフリをするあたしに、市川君もやっぱり何も言わなくて。
時間だけが、静かに流れていく。
HR、休み時間、授業中にふと声をかけるとき……
「美術室に来ないで」って、断るための一言をいう時間は、いつだってあった。
だけど、どうしても言えなくて……
あの画像で脅されているわけでもないのに、あたしは彼を拒否することができずにいた。
「放課後、美術室でね、先生」
何か言い返そうと振り返ると、そこにはもう甘い香りが残っているだけで……
あたしは、小さくなっていく彼の背中を、ただ見つめることしかできない。
ダメだってわかってるのに。
こんなこと、誰かに知られたら、きっと問題になるのに。
放課後になると、あたしは美術室に向かってしまうんだ……
――あれ以来……
市川君が、あたしを襲いかけて以来。
市川君は、そういうことをあたしにするのを、ぱったりとやめた。
抱きしめてきたりとか、キスしたりとか……
そんな風にあたしに触れることは、本当になくなったんだ。
ただ美術室にいて、時間を過ごすだけ。
あたしのことを聞いたり、自分のことを話したり。
時には何も言わずに、あたしのことをじっと見てる。
その視線に気づかないフリをするあたしに、市川君もやっぱり何も言わなくて。
時間だけが、静かに流れていく。
HR、休み時間、授業中にふと声をかけるとき……
「美術室に来ないで」って、断るための一言をいう時間は、いつだってあった。
だけど、どうしても言えなくて……
あの画像で脅されているわけでもないのに、あたしは彼を拒否することができずにいた。