急いで立ち去ろうとする私に向かって山口は小声で一言だけ呟いた。 「舞歌ちゃんが最高の思い出を作れるように楽しませろよ」 それで理解した。ああ、こいつは本当に良い奴だ――。 自分は最高の友人に恵まれたものだ。そう、実感した。 「あとで山口さんにもお礼、言わなきゃいけませんね」 「ああ、そうだな。そのためにも今は急いでここから出るとしよう」 「はいっ」 手をしっかりと握り、冷たく吹く風を切って駆け抜ける。 舞歌が待ちわびた外の世界まであともう少しだ。