月下の踊り子







「何ですか?これ?」

「コーヒーだよ。まぁ飲め」

「本当ですか?珍しいですね。それじゃ遠慮なく頂きます」



普段と違った行動を疑われ、一瞬ヒヤッとしたがコーヒーは三村の喉を通過していく。


作戦は成功。一時間ほどで効果が表れ始めるはずだ。


その頃には舞歌を迎えに行っているのでちゃんと効いているか確認出来ないのが少しばかり不安なのだが。


二回目の見回りの時間まで仕事に打ち込む事にした。


集中できないのは仕方ないだろう。


だが三村に勘付かれない様にいつも通りの【仕事熱心な羽鳥】を演じる。



「そろそろ時間だな。見回りに行ってくる」

「……あ、はい……」



今や三村の目蓋の重力は普段の時と比べて数倍に膨れ上がっているはず。


どうやら薬が効いてきたようだ。


それを確認した私は電灯を手に取り、見られないようにさり気なく紙袋も取って、舞歌のもとへ向かった。


電灯は足元以外は照らさない。小走りで舞歌の牢まで向かう。