ヒクヒクと顔を引きつらせながら彼女と話していると、


「坂口くんっ」


最近記憶した声が名前を呼ぶ。


前髪を乱したまま、笑顔で俺の元へ来る。


「お弁当、すっごく美味しかったよ」


彼女は笑顔で言うが、話題が話題。


すぐに視線を黒髪美女へと向けるが、ニヤニヤと笑うばかり。



「お、おう...」



引きつった笑顔を残したまま答える。


あの弁当...。


しくじった。


中村に渡すはずじゃなかったものを、取り違えてしまったんだ。



今朝中身を見たから覚えている。



「坂口くんって、オトメンなんだね!」


朗らかな笑顔が癪にさわり、無言で頭をはたく。


「った! なんで?!」