あ。 もう無理だ。 親父さんとの約束なんかこの際ナシ。 「だから、」 まだ話を続ける彼女の右腕を掴んで、引き寄せる。 トン、と軽く彼女の頭が肩に当たる。 「う、きょくん」 「しゃべんな」 柔らかい髪を指に絡める。 ふわっとシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。 存在を確かめるかのように、少しだけ腕に力を入れる。 加減したのは無意識に、以前抱きしめたことを思い出したからだ。 苦しめないように。 壊さないように。