カバンを持って、保育園校門で待つ坂口くんの元へ行く。
秋の夜は少し肌寒い。
坂口くんはわたしが側まで行くと、ゆっくりと歩き出した。
保育園からわたしの家まではそう遠くない。
ゆっくりとした歩幅。
心なしかわたしに合わせてくれている気がする。
道の両脇には民家が立ち並び、美味しそうな匂いが漂う。
今日の晩ご飯はなに———
瞬間、体がグイッと力強く引き寄せられる。
思考が瞬間的に停止する。
「危ない」
頭上からはっきりとした声が降ってくる。
チリンチリンと通り過ぎる自転車のベルだけが聞こえる。
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