Reminiscence

真っ先に膝をつき、頭を下げたのはアシュレイだった。
ランジエはそれに気づき、アシュレイに声をかけた。
「猫族の少年。新月の夜に生まれ落ちた者たちの末裔よ」
「貴女様と同じ祖を持つとはおっしゃってくださらないのですね」
「……口にされない真実を憎むべきではない」
「導きの月に従い、偽られた真実を憎むべし」
「その通りだ」
ランジエはそう言うと、アシュレイに立つよう命じた。
「人間に名乗る名などありはせぬ。私のことを呼ぶときはシエンクロウと呼べ。シエンでも構わぬがな」
そう言って、ランジエはフェンの隣に移動した。
アシュレイは放心したようにシエンクロウ、とつぶやき、ぐっと唇を噛んだ。
アシュレイの様子で、フェンはランジエが精霊王であることを思い出した。
既に記憶の薄れた村人より、記憶の強くのこる猫族にとって、その名前は女神とほとんど同等の意味を持つものなのだろう。
もしかしたら、ここにいる誰よりも敬虔であるのかもしれない。だからこそ、あそこまで恐縮しているのだろう。
ティーは、少し心配そうな表情をしてアシュレイとランジエを交互に見たが、ランジエがまた何かを言うことはなさそうだと判断したのか、騎士達に向き直った。
「とりあえず、自己紹介をしよう……皆じゃないだろうけど、まだ知らない顔もいるはずだから。皆知ってると思うが、僕は司祭だ。王女の意向を直接尋ねることができるので、騎士達のリーダーということになる。ウェスティー・ド・アマランスだ。親しい者はティーと呼んでいる」