泥棒の少年はしばらくフェンの顔から目が離せないようだったが、突然ふいっと顔を背けた。
「冗談じゃねぇ。これは俺のだ」
口では強がっているが、決まり悪げな顔をしていた。
フェンはふんっと鼻を鳴らして、少年の袋を持っている方の手を掴んだ。
「それこそ冗談じゃない。ぼくから盗んだものを堂々と自分のものだと宣言するなんて」
ぼく、という一人称は思いがけずするっと出てきた。
男装をしているからだろうか。別に今まで通り私でもいいはずだが。
「返してもらう。それはぼくのものだから」
そのとき、突然赤い光が二人を下から照らした。
「なんだ!?」
二人は同時に叫んだ。
そしてフェンは足元に移動系の魔法陣が敷かれているのに気づいた。