「どう、落ち着いた?」
ミカゲはティーポットを持ってフェンに問いかけた。
フェンはミカゲにそっと微笑む。
疲れは見えるが落ち着いているように見える。
フェンとシエンとミカゲはキッチンに移動し、ミカゲの用意したお茶を飲んでいた。
いつまでも玄関の前で立っていないで、温かい紅茶でも飲めば気も落ち着くだろうと考えてのことだ。
「ランジェ、約束って何?」
「その前にお前だ。人間が死んでから先の記憶がないと言うのは本当だな?」
フェンは無言でうなずいた。
未だに暗いからっぽがそこにあったが、声を取り戻してからは記憶の正体に不安を抱くことだけはなくなっていた。
ランジェが帰ってきてくれた、ということはフェンにとってはそれだけ大きいことだった。