ミカゲがフェンを放すとフェンはシエンに問いかけた。
不安そうに声を細めて、シエンを離さない、とでも言いたげに強く抱きしめている。
「どこ、行ってたの……」
「南まで。女神に誓った約束を果たしにな」
「約束?」
「お前を守るための約束だ」
「せめて、何か言ってほしかった」
「すまない」
シエンは琥珀色の瞳を痛ましげに細めた。
フェンは瞳を閉じて、ただ何も言わずにランジェを抱きしめていた。
寂しさを紛らすように。