秋も終わりに近づいた頃、いつものようにミカゲがフェンに勉強を教えていた時間、物音と言えば、ミカゲの声とペンが紙をこする音、紙をめくる音しかしない時間に、別の音が響いた。
風の音だ。
ミカゲはマナが揺らめくのを感じた。
誰?
ミカゲがいぶかしむと、突然フェンが立ち上がり、部屋を飛び出した。
「フェン!?どこに行くの、戻ってきなさい!」
派閥の人間だったら大変だ、とミカゲが慌てて部屋を出たとき、明るい、心のどこかでずっと聞きたいと思っていた声がミカゲの家中に響いた。
「ランジェ!」