Reminiscence

フェンと旅人は岩陰から化け物を観察した。
巨大だ。
根を張っているようにぴったりと地面にくっついていて動かない。
闇のような色の体で、しかし見失うことはないだろうと思わせる。
その体には無数の紅い脈がびっしりと這うように浮き出ていたからだ。
おぞましいその姿は確かに悪の存在そのもので、恐ろしさを喚起させた。

『そこで何をしている、こちらへ来い』

突然、嘲笑のような声が聞こえた。
化け物がこちらを見ていた。
その表情はわからないが、笑っているのだろうと直感でわかる。
フェンと旅人は視線を合わせると、同時に化け物に襲い掛かった。