Reminiscence

女性は旅人を解放するとフェンに視線を合わせた。
いきなりの至近距離でフェンはうろたえる。
いかにも、大人の女性、という人だった。
この大陸には珍しいまっすぐな黒髪で、少し変わった、しかし美しい顔立ちをしていた。
「変なの。増幅系と封印系の魔具をつけてるくせにマナなし?しかも体つきもなんだか違和感があるわ。訳ありのようね。お嬢ちゃん、名前は?」
「ふぇ、フェンです。リーフェ……」
「やめろ、フェン!」
フェンがフルネームを言おうとすると旅人はするどく叫んだ。
「あなたは黙ってなさい。ほら、なに?リーフェの後は?」
女性は妖しい笑みを浮かべてフェンの頬を撫でた。
フェンは背中がぞっとするのを感じた。
「い、言いません。師匠がだめって言ってるから」