Reminiscence

「僕の名前はウェスティー・ド・アマランス。君ならティーって呼んでもいいよ。それじゃ、またいつか会えるといいね!」
ティーはそう言うと走っていってしまい、人ごみに紛れてすぐに見えなくなってしまった。
『フェン、それを袋に詰めてさっさと帰ろう。お前の歌を聞いてないやつが不審そうに見ている』
頭の中に直接聞こえるランジェの声に、フェンは慌てて袋にシードとお菓子を詰めると宿屋に向かって走り出した。
「ねえ、ランジェ」
『なんだ?』
「私の歌声って精霊のものなの?」
『初めて聞いた時からそれはお前の歌声だ。右目の封印を解かねば精霊の魔力は声には宿らぬ。誇っていい』
「そっか」
フェンは身軽に人をよけながら、無表情に呟いた。