わたしはお兄ちゃんが電話で話している間暇だったので、テレビを見て時間を潰していた。
後ろから途切れ途切れにお兄ちゃんの声が聞こえる。

狂ってしまうほどに、好き。
まるで胸を締められているような苦しさを覚える。
きっとお兄ちゃんがいなくなったら、わたしはもう生きる希望もなくしてしまうだろう。

少し依存しすぎだと自分でも感じるけれど、止められない。

できるなら、止めてほしい。
これ以上エスカレートする前に、この想いを止めてほしい。
もう恋焦がれたくなんてない。苦しい想いなんてしたくない。

だって……正直に言ってしまえば、お兄ちゃんに恋していていいことなんて一つもないもの。

結ばれるなんて常識的に有り得ない。
それを分かってしまっているから、苦しくて、悲しくて。

リビングの真正面にある窓から、ちょうど下校している途中のカップルが見えた。
手を繋いで、微笑みあって、見つめ合って。

羨ましい。
もしお兄ちゃんが、清水祐斗であって、わたしのお兄ちゃんじゃなかったら、わたしはこんな想いをせずに済んだ。
想いを馳せていたとしても、絶対に結ばれないとは限らない。
百パーセントの内、一パーセントくらいは望みがあるだろう。

だけど今は、絶望的だ。
悔しいくらいに、絶望的。