「え、なに?」

驚いたように、お兄ちゃんがそう言った。

わたし、お兄ちゃん相手になにを言っているんだろう。

わたしはそう思い、手に頭をやりながらソファに倒れこんだ。
その際に謝りの言葉を入れて。

「ごめん。わたし、疲れているみたい」
「ああ、早めに休んだ方がいいんじゃないか」

間近で聞こえたお兄ちゃんの声が、なぜか遠くに聞こえた。
わたしの頭の中では、さっきのお兄ちゃんの声がリピートされている。

――なあ、教えろよ。どんなやつなんだ?

お兄ちゃんだよ。

――お兄ちゃんに秘密で付き合っちゃ駄目だぞぉ。

お兄ちゃんはわたしに秘密で有希と付き合っていたよね。
なのになんで、そんなこと言うの。

ねえ、なんで。
なんでわたしばかり、こんな辛い気持ちをしなくちゃいけないの。

悔しさと共に、怒りが込みあがってくる。

「……お兄ちゃん。わたし、寝てる」

これ以上お兄ちゃんといたら、お兄ちゃんを傷付けてしまうかもしれない。
わたしはそう思い、お兄ちゃんにそう告げるとソファから立ち上がり自分の部屋へ向かおうとした。
そのときに、ぐいと腕を引っ張られる。

「お兄ちゃん……?」

驚いて振り向く。
そこには神妙な顔をしたお兄ちゃんがいる。