「……え? それ、どういう意味?」

思ったとおりの反応をしてくる。
わたしは心の中でくすりと笑った。

狂っているとでも言えばいい。
それは歪んだ愛情とでも軽蔑すればいい。

だってわたしは、愛し方も知らないんだもの。
ただ本能的に動いて、喋るだけ。

「そのままだよ。もう無理だって。もう話しかけないでって」

わたしは鞄から教科書を抜き出しながら、そう言った。

返事が返ってこない。
よほどショックだったのだろうか。

わたしは机に教科書をつめると、ようやく有希の顔を見た。

口元を両手で覆って、焦点の合わない目でわたしを見つめている。

「それ……本当、なの?」

声まで震えている。
わたしは真っ直ぐに有希を見据えて、さらりと言った。
有希を絶望に陥れる言葉を。

「知らなかった? 随分前から、鬱陶しいって言ってたよ。もういい加減に、ってことで伝言頼まれたの」

恐怖で引き攣っていく有希の顔。
可愛らしさはどこかへ行ってしまったよう。

そんな有希を見ていると、なぜだか可哀想に思えてきた。
わたしの嘘で、ただの嘘で、心をこんなにも壊されてしまって。

だけどこれも自分のため。
敵に可哀想も何もない。