「くそっ…」

立ち止まり、龍娘は舌打ちする。

校舎一階、図書室付近。

雲雀の姿は完全に見失ってしまっていた。

「私とした事が不覚を取った…円香が変装術の名手である事を知っていながら…」

ただの個性的な生徒と言うなかれ。

天神学園の生徒達は、その多くが得体の知れない能力や技術を持つ。

普通の高校生と侮っていると、中国拳法の達人である龍娘でさえ足元を掬われる事もあるのだ。

故に指導の際にも決して気は抜けない。

下手をすれば、怪我をさせられるのはこちらの方かもしれないのだから。