意識してないのに自然と便利に細工された赤い本の登場は、自分以外の力が関与しているのではと男の子は訝る。 「どうかした?」 考え事をしていた男の子を見て、シータが心配そうに訊く。 「なんでもないよ。それより体は大丈夫なの?」 「イオタ君と話してたら元気が出てきたよ」 確かに注射針を刺されていた頃とは比較にならないくらい、シータの表情には明るさがある。 「よかった」男の子はシータが元気になったことと、自分の名前がわかったことが重なり、心から安堵した。