吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「やぁ、イオタ君」


シータは貧弱な笑顔を見せた。


三日月の形をした長い前髪が右から左へ垂れ下がる。


「イオタってぼくの名前なの?」


へんてこな名前が自分のものなのかまず確かめたかった。


「君は記憶の一部が欠落しているようだね」


「そうかもしれない……でも、どうしてだろう?」


男の子は野良猫がエサを強請る悲哀な目をさせた。