「やぁ、イオタ君」 シータは貧弱な笑顔を見せた。 三日月の形をした長い前髪が右から左へ垂れ下がる。 「イオタってぼくの名前なの?」 へんてこな名前が自分のものなのかまず確かめたかった。 「君は記憶の一部が欠落しているようだね」 「そうかもしれない……でも、どうしてだろう?」 男の子は野良猫がエサを強請る悲哀な目をさせた。