男の子は不快感だけが残る舞台の続きを待って、物語に明るい兆しが見えてくることを期待したが、新たな出演者が登場するわけでもなく、シータの演技に進展もない。
こんな状態がいつまで続くんだろうと思っていると、シータが弱々しい声をもらす。
「イ、イオ……タ……」
シータの途切れがちの台詞は意味不明で、男の子は耳をすませて理解するように努める。
「イオ……タ……イオタ君、そこに居るんだろ?」
声が小さく、舞台からの台詞としては失格で、最前列の椅子から身を乗り出して耳を傾けてやっと聞き取れる範囲。
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