手品のような種でもない限り、本物の血を採取しているようにしか見えない。 シータは目を宙に彷徨わせ、抵抗力を失う。 真っ赤に染まった四本の注射器で左右のスーツのポケットをパンパンに膨らませると、女は満足そうな表情をした。 「良い子ね」 女はそう言いながらシータの頬を手のひらで撫でた。 身動きできない獲物を舌でいたぶる蛇のような手付きで、男の子の目には淫らな光景に映った。 魂が抜かれた顔をしたシータに、女は「またね」と手を振ると舞台袖に消えた。