これを全部飲まないといけないのかな?
男の子の前に立つ女の表情は笑顔に近いものだったが、それがかえって怖かった。
ワイングラスの脚を掴んでいる手を震わせながら唇を当てる。
薄いガラスの口の部分は下唇にフィットして、赤い液体がすんなり入ってきた。
「ケホッ、ケホッ……」
鼻に抜けてきた錆臭さは喉を通過したときに拒否反応を起こしたが、吐き出すわけにはいかず、男の子は口を手で押さえながらゴクリと飲み込む。
「まだ半分残ってるわよ」
女に言われ、ワイングラスに残っている赤い液体を疎ましく見詰めた。
メニュー