「遠慮しないで飲みなさい」 女は白い歯を浮かべた。 「アルコールは法律違反だと思うんだけど……」 赤い液体の正体がはっきりわからないので、男の子は見た目で判断してみる。 「アルコールじゃないわよ」 女が笑いを噛み殺すように言う。 男の子は女に悟られないようにワイングラスを持ち上げたときにニオイを嗅ぐ。 確かに鼻を刺激してくるアルコールの香はしないが、錆臭い嫌なニオイがした。