男の子は反射的に女の後ろをついていく。
デジャブというやつなのか、こうやって女の後ろ姿を見ながら建物の中を歩くことが、日常茶飯事的に行われていたような気がした。
玄関ホールを素通りし、女は玄関から見て左側のドアを開けた。
できたら大階段を上りたかったな、と男の子は好奇心をいったん心の奥に仕舞うが、駄々を捏ねてでも自分の意見を押し通すべきだったと後悔した。
右側の部屋は昔の図書館といった風情の部屋だったが、左側は修道院のシスター達が食事する質素な広間といった雰囲気の部屋で、床まで伸びる側面窓は真っ暗な森の闇を映し、ボールトと呼ばれる局面天井は飴でコーテングされたチョコレートのようにエナメル仕上げのレンガが積み上げられ、本物か偽者かわからない大理石の柱に支えられている。



