すると、女の顔が途端に曇る。 「あのね、そうやって得意げに知識をひけらかすことは嫌な奴と思われるからやめたほうがいいわよ」 口調はきつくはなかったが、男の子は自分の性格を全否定されたような気持ちになった。 「わかった……」 という返事も小さく、女に聞こえなかったかもしれない。 暗記力を自慢すると怒られるかもしれないと思った男の子は脳内の赤い本のことを話すのをやめた。 「お腹空いたでしょ。ついてきなさい」 女はクルッと背中を向け、半ば強制的な言葉をかける。