男の子には女の言ってることが理解不能で、首を傾げたくなる。
「勉強熱心ね」
机の上に増えた一冊を女は凝視する。
本棚から勝手に新しい本を持ってきて読んだことを怒られるかなと思った男の子は冷や汗ものだったが、女の反応は意外に穏やか。
「この建物のことが相当気になるみたいね」
女は面白くなさそうに『研究・建築学の歴史』という本のページを捲りながら言う。
「この建物は昔の建築様式をモチーフにして造ってるんだね。外観はルネサンス、内部はバロック様式でしょ」
男の子は植え付けたばかりの知識を披露した。
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