吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



表紙にイラストなどはなく、緑色のハードカバーの古そうな本で、男の子が片手で持てないほど重い。


本棚から抜き、両手で机に運んで本を広げた。


中身は写真付きで過去の建築様式から丁寧に説明してあり、男の子は、しめた!と思った。


いま自分がいるこの屋敷について、まったく情報がないのは少し怖かった。


記憶もなければ、ひょっとして自分は夢の中にいるのでないだろうかという不安もあった。


ページを捲ると、瀟洒な鐘桜や礼拝堂が美しいサンタ・マリア・デル・フィオーレ・大聖堂という建物の写真が載ってあり、十五世紀から十六世紀にイタリアで主流だったドーム屋根や列柱が特徴のルネサンス建築だと説明書がある。