「座りなさい」
女の声が響いた。
本が部屋を独占しているが、見た目より空間はありそうだ。
男の子は角材を組み合わせただけの椅子に座る。
座面にクッションがないので、長時間座るとお尻が痛くなりそうで、しかも座った瞬間、床よりひんやりとした冷たさが伝わり、背板もガラスがはめ込まれていない窓みたいに角材の枠しかなく、背中を丸めて後ろに体重をかけると挟まってヤドカリになりそうだ。
女は書棚の本の背表紙に指を走らせ、「今日はこれね」と言うと一冊の本を抜き取り、ドンと重量感を響かせて机の上に置いた。
メニュー