吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



ドーム型の天井に天使の画が描かれ、ドア側以外の三つの壁が本で埋め尽くされた歴史ある図書館が存在していた。


床から天井まで一〇メートルくらいのダークブラウンの書棚に、隙間なく本が収められている。


横にスライド可能な梯子が用意されているので、本の出し入れは子供の身長でもできそうだ。


両脇から本に圧迫されそうな真ん中のスペースに、天板と四つの脚を付けただけのシンプルな机と椅子が、おまえの居場所だと言わんばかりに鎮座している。


その角張った真四角の机の上に、緑色の被せガラスのシェードに真鍮のアームが支える電気スタンドが置いてあり、レトロ感を醸し出していた。


頭に浮かんできた赤い本は、きっとこの部屋が影響しているんだと男の子は思った。