吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



服を着ている間、女は男の子の様子をじっと見ていた。


「この建物の記憶はある?」


女が尋ねてくる。


「ううん」


男の子は首を横に振った。


「また一から教えないといけないのかしら?あぁ~面倒くさい」


女はうんざりした顔をすると、右側のドアを開け、目配せで一緒に来るように合図をする。


蝶ネクタイを首にはめながら後を付いていく。


男の子は部屋を見て、あっ!と声を上げそうになる。