階段の両脇が真ん中だけ徐々に狭くなり、手摺の曲線がうつくしいデザインの大きな階段が絵画のように見えた。
「着替え持ってくるからそこで待ってなさい」
女は汚れた服と靴を奪うようにして男の子から取り上げ、五メートル先の正面のドアを開け、大階段を上っていく。
玄関ホールには希少な装飾品などは置いておらず、花形の笠をしたランプがそれぞれのドアの横に装備されているだけで薄暗い。
床は風合いのある筋模様で表面がつやつやとした大理石が敷き詰められているのだが、足が冷たくない。
踵で叩いてみるとトントンと安っぽく響く。



