吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



この赤い本で過去の記憶を丸裸にすることは無理なのかな?


思い悩んでいると赤い本が右へ左へと不安定に動く。


頭の中で地震が起こってる?


「着いたわよ。何ボォーとしてんのよ」


運転席から女がイライラしながら男の子の肩を掴み、体を揺すっていた。


女は赤い縁のメガネを外していた。


運転のときにだけかけるようだ。


「ご、ごめんなさい」


病気かと思ったが、女の人が言うようにボォーとしてたみたいで、男の子はほっとしながら謝る。