声質は脳内を駆け巡る感じで、隣の人に話しかけられる感覚とは違っていた気もする。
ひょっとすると、心の声?いや脳ミソの声?
男の子は声の正体が誰なのか考えるため、目を閉じ、周りの音が聞こえてこないように集中した。
すると頭の中に、なめした赤い革で装丁された分厚いクラシカルなデザインの本が浮かび上がってきた。
なんだろう?と思った好奇心が作用したのかわからないが、赤い本にズームアップすることができ、表紙には装飾文字で『ぼくの知識』と金箔押しされていた。
読んでみたいと念じると、風が吹いたみたいにパラパラと捲れて適当なページで静止した。



