対向車が来たら正面衝突する危険性があるのに、速度を緩めることはしなかった。
怒ってるのかな?と思いながら男の子はあれこれ会話の糸口を探したが、これからどこ行くの?とか、お姉さんは何者?とか、頭に浮かぶのは質問ばかりで、女をさらに不機嫌にさせる恐れがあった。
男の子は口を閉ざしていることが最善の策だと確信していたが、我慢できるかは疑問だった。
車が徐行を始めた。
正面に先端が矢じりのような細工がしてあるレトロな柵が行く手を阻んでいる。
その先の道は舗装されていなかったが、細かい砂利が均等に敷き詰められ、車が走るのは問題なさそうだった。



