男の子が地上に立った場所は、高いビルに挟まれた路地裏。
配管から蒸気も出てなければ、しばらくエサにありついていないと思われる痩せた野良猫が、何も入っていないことがわかっているのか、転がっている大きなゴミ箱があっても素通りし、人々が暮らしている様子が垣間見れない。
冷たい風が男の子の頬に触れ、自分を歓迎してくれるのは夜空にぽっかり浮かぶ満月だけのような気がした。
「あぁ~もう!」
女は濡れたハイヒールを蹴るようにして脱ぎ、ストッキングが伝線していないかチェックした後、消臭スプレーを体中にかけまくる。
これから就職の面接に向かう大学生のように、紺色のスーツに膝丈のスカートで身を固めている。



