吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



中指と人差し指の第二関節が鉄格子に絡まり、体が宙に浮く。


しかし、指の関節が全体重を支える力は乏しく、ちぎれそうな痛みに耐え切れずお尻から落下。


光の輪がグングン迫り、巨大化して、男の子を包み込もうとしていた。


荒い画像で撮影されたUFOの予測不能な動きのように、小刻みに揺れる光は人工的なものだと男の子の脳は処理した。


十メートルもない距離まで近づいてこられると、眩しくて目を背けた。


「また、ここに来てたのね」


声は女性のもので、うんざり感が多分に含まれている。