吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



若干の幸福に男の子は安堵するが、その時間はとても短かった。


一〇〇メートルくらい走ると、闇の先に小さな光の輪が揺れているのが見え、また警戒心が働く。


こっちにも!?


光は完全にこちらに向かってきている。


「グゥグゥォォ~」


さっきよりも大きく猛獣が咆哮するような叫びが聞こえた。


挟まれた格好になり、男の子は立ち止まる。


あぁ~どうしよう……。