吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



イオタはすんでのところで避けたが、凶器と化した鉤爪が客席、そして床ごと削り取った。


ポッカリと井戸のような穴が開き、過剰なほど深く掘られたことにイオタは不可解さを感じ、ガンマ少佐も自らの度を越した破壊力が解せないといった表情で右手を見詰めている。


ガンマ少佐の迫力に圧倒され、劇場が破壊されるイメージを脳内に描いてしまったのかもしれないと思ったが、よく見ると穴は開けられたというより、前々からそこにあった空洞の上部を崩しただけで、かなり広い空間が存在しているらしく、生暖かい風が吹き抜けてくる。


どことなく見覚えがあるような……いや、見覚えがあるからこそ空洞が存在しているはずで、無意識のうちにイメージしてしまったんだ……そうだ!