吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



人を苦しめる強欲な人間。


辞書から抜粋してきたと思われる一連の体系に基づいた文章を読むと、自分が吸血鬼なのか、人間なのか、実態のない存在なのか、頭の中は混沌としてきたが、自分が何者なのかということで迷わないようにと脳内の黒い化け物が気遣って本を開こうとしなかったとは考えられず、ガンマ少佐の弱点を簡単に教えたくなかっただけだと推理してみる。


追い詰められたところで、助言をするかわりに脳を支配して体を乗っ取る条件でも出してくる腹積もりだったのかもしれない。


二本角が生えた黒い化け物は悪魔的要素の塊なのだから、それくらいの悪知恵は働く。


イオタは脳内の黒い化け物の悪巧みを苦笑いで処理して、もう一度デリンジャーを両手に握った。