吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



イオタは脳内の赤い本を開き、首を切る、という言葉が、ある定まった意味を持つ慣用句であることを確認する。


「露骨に言うのね」と、女は苦笑する。「でも、どうして解雇されたなんて具体的なことまで知ってるのかしら?」


「二階からイオタ君を運んでいるとき、引っ掻いた血が爪に僅かに付いていて、舐めてみるとジェーンさんの記憶でした」


端末で誰かと連絡を取り合っているところを覗いているのがバレて、首を咬まれた後のことをシータは言っている。


牢屋のような部屋まで運ぶように命令され、隙を見て血を舐めたのかもしれないとイオタは思った。