「できるさ」 イオタはパチンと指を鳴らす。だが、何も起らない。 「待って、舞台に大きなスクリーンを張って、ぼくが注射器を齧ったシーンを映し出してあげるから」 パチン、パチンと何度指を鳴らしても、舞台に変化の兆しは見られない。 「紫外線でないと確認が難しい微量なシータ君の血液が注射器に付着していたから、あなたはシータ君をあなたの記憶の中へ引きずり込むことに成功した。ちゃんと注射器を洗浄しとけばよかったわ」 女はイオタの行動とは無関係なことを喋り、自らに反省を促す。