吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「シータの知識を借りただけさ」


「これから私のことをジェーンと呼んでね」


女はウインクしてみせた。


「ふざけるな!」


ジェーンという名前が本物の可能性は低く、完全になめられていると思ったイオタは腸が煮え繰り返った。


「そんな汚い言葉、どこで覚えたのかしら」


「ぼくの感情が予期しない行動に駆り立てるのさ」


イオタは身長だけじゃなく、考え方が変化してきているという自覚があった。自分で制御できるものではなく、吸血鬼としてごく自然なことなんだと理解するようにした。